2000年ウラジオストック留学⑥

ロシア財政危機の影響・市民生活の困窮

ロシアは貧富の差が激しい国である。もともとソビエト時代においては一部の特権階級をのぞいて貧富の差は無く、最低限の衣食住がすべての国民に保障された国だったのだが、ソ連崩壊後はそうした生活インフラのすべてが崩れ去った。ロシアは弱肉強食、経済のバトルロワイヤルが始まった。

 

ことに、98年のロシア通貨危機は壊滅的な打撃を与え、ロシア国民の数%がホームレスも同然の暮らしをする羽目になった。その一方でマフィアが台頭し、国や警察は機能せず、地方はマフィアが牛耳ることとなった。

 

そうしたことから人心は荒れ果て、血の気だった人々が町を歩く、私が留学した当時のロシアはそうしたところだった。最もその後プーチン政権が強権的に全国を統治し、資源ビジネスで好景気になっている現在(2007年ころ)では若干状況も変わっているのだろうが。

 

私が留学した当時のウラジオストックは、とにかくホームレスが多かった。特に驚かされ心を痛めたのは子供のホームレスや親子連れ、赤ん坊を抱いた女性のホームレスなどがあちこちにいたことだ。

 

平和ボケしている我々が見ると思わず手を差し伸べたくもなってしまうのだが、そうした現実にすっかり慣れてしまっているロシア人たちは無関心に彼らの前を通り過ぎていく。

 

ホームレスの多くは地下街の入り口、寺院周辺などに多くいた。中には負傷した退役軍人と思しき男性もおり、その手には指が無かった。

 

だが、そのご身の毛もよだつ事実がロシア人の友人から明かされた。彼らの多くはマフィアの管轄化に入っていたのだ。彼らは施しものの一部をショバ代としてマフィアに払い、最低限の食料などをマフィアから援助されているらしい。

 

更に恐ろしいことに、私が見た退役軍人と思しき男性は、彼の指はマフィアに切断されたものである可能性が高いということ

である。どういうことか?通行人の同情を誘うためにマフィアに依頼して指や手足を切断してもらうのである。事実私は街中で内臓のはみ出した男性ホームレスを見たが、彼の首から提げた『助けてください』とロシア語で書かれたプラカードの文字は印刷されたものだった。おそらく彼も自分の元締めであるマ

フィアに依頼して腹を割いてもらったのであろう。

 

経済格差と暴力によって日本とは比べ物にならないほど人権が抑圧されているのが私の見たウラジオストックの現状であった

 

 

 

 

2019年追加

上記のような社会情勢は1998年のロシア財政危機に起因する。参考までにそにウィキペディアの記事を引用する。

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ロシア財政危機(ロシアざいせいきき)または、ロシア金融危機(ロシアきんゆうきき)とは、ロシア財政が悪化したところへアジア通貨危機の余波も受けて発生した債務不履行(デフォルト)並びに、一連の経済危機を指す。

狭義には、1998817キリエンコ政府並びにロシア中央銀行の行った対外債務の90日間支払停止と、これに起因するルーブル下落、キャピタル・フライトなどの経済的危機を指す。

広義には、それ以前から各種の要因でロシアの財政が逼迫し、債務支払い停止を経て資本の流出、ルーブルの下落を見たロシア国内の経済混乱、並びに、金融不安に伴う株価下落、投資方針を量から質へ転換した資本の移動、ヘッジファンドの倒産など、世界経済が受けた影響を指す。

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