私と数学 (エッセイ)

以下は仙台市内の某文学サークルに私が提出したエッセイの課題であって、それを見やすく修正したものである。

 

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ー私と数学ー

 


数学は長らく苦手だった。なんといっても私は文系なので当然理数科目には苦手意識が長らくあった。高校時代も相当に苦労をしたが努力は空回りし、高3の頃にはすっかり数学アレルギーとなり果てていた。 

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そんな私だが、大学入学後も自己啓発に努め数学力は向上していき、現在では高校時代よりははるかに数学的思考ができるようになった。とはいえ、中学高校時代に数学力が今と同程度にあれば、もっと上の学校に行けたものを、、、と思われてならない。

 

 


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ところで数字の開祖といえばピタゴラスだ。三平方の定理は誰でも知っているし、数学のキーパーソンと言ってよかろう。

以下はWikipediaの概要である。古代ギリシャの数学者ピタゴラスは知識を求めて古代オリエント世界の各地を遍歴した。エジプトでは幾何学(図形と関数)を学んだしフェニキアで算術と比率、カルディア人(イラク人)から天文学を学んだという。

 

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彼の修行時代を見て感じるところは、学問が旅とセットになっているということである。要は今と違って家にいながらスマホで情報が取れる社会じゃなかった。情報が欲しけりゃそこまで行かなきゃならなかったと言うことだ。スマホ以前だって学校や出版物で数学の知識はゲットできた。だが、古代には義務教育や出版業と言うインフラがなかった。

また情報が師匠からの口伝で得る場合が多く、師匠との関係ができてないと情報も入りづらかったようだ。対人関係と情報収集が密接につながっていたのだ。

 

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そうしてみると現代の情報インフラはピタゴラスの時代からしたら恐るべき進歩である。

今日はスマホがあり、ますます膨大な情報にアクセスできるようになっている。海外有名大学の授業が無料で見られるし、サピエンス全史のハラリがやっている講義すらコタツでみかんを剥きながら聴講することができるのである。これがインフラのない時代なら、ハラリに弟子入りしないとハラリの話は聞けなかったし、ハラリが話の合わないタイプで嫌われたら何年弟子をしても情報はもらえなかったろう。

 

ハラリの講義は一部無料で見れる

https://youtu.be/-xwhvGQvuC0


現代なら教科書でつまづいた箇所などもその場でググれば、20世紀の学生が見たら驚愕するほどの良質な解説や資料が山のように出てくる。先生や塾講師と関係を作らなくてもグーグル先生とYouTubeがなんでも教えてくれるのだ!こんな有難い時代はない!

 

こんなものまでロハで見れるのだ!

↓↓

https://youtu.be/mSbMoOLzoR0

 

https://youtu.be/k6JX0iYTGqY

 

 

 

恐らく私が令和の受験生であったならば高校時代に数学で躓くこともなかったのではないかと思うと、30年遅く生まれたことが残念に思われてならない。


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さて、そこで私はアニメで流行りの並行世界的な設定で、スマホが存在している架空の1990年代に自分が中高生をしている世界を想像してみた。

おお、平成元年築の実家がまだ新しい。親父は今の俺と同世代だな。母親が若い。弟たちもウザいが可愛いね。

通学電車でスマホを開く下校中の俺。サッカー部と野球部が幅をきかせて嫌な学校だったが、ツイッターでそのことを愚痴るとすぐに見ず知らずの人たちが励ましてくれる。歴史や外国語の趣味について、学校では語れる相手がいなかったが、snsですぐに趣味の仲間もできた。いいねぇ。スマホのある90年代サイコーだよ。

帰宅して夕食を終えた俺は勉強を始める。科目は苦手な数学だ。だが、分からないところで引っかかっても、Google先生が懇切丁寧に教えてくれるから大丈夫。きっとこの世界なら俺の偏差値も80くらいはいけるんじゃないか?

「あー!」

どうした、俺?

「こんな問題もわからないなんて!俺はどーしてこんなにダメなんだ!」

いや、まて、そこはそうやって自分を責めるところじゃないぞ、俺よ。

「いつもいつも、甘えて嫌なことから逃げているからこんな」

御託はいいから、分からない箇所を分析しろよ!

「数学ができないのも、部活で二年生の和田に舐められるのだって、きっと俺のこの甘えた心が」

関係ねえこと混同してんじゃねえよ!いいから早く分析しろよ!!

「あ、ラインに通知が」

ラインを開くと中学の俺はそのまま趣味のオープンチャットでやり取りしたり、音を小さくしてYouTubeを見たりモンストしたりし始めた。そしてついに就寝時間まで、教科書を開くことはなかった。なんということだ!!

 

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そうか、当時の俺は論理的に物事を考えられなかった。そんな奴にスマホを持たせたって、急激に学力が変わることはないのかもしれない。架空のスマホ90年代から現実に戻ると、道の駅の駐車場に泊めている私の車には夕陽がさしていた。