仮想通貨と交子(世界最古の中国のお札)

最近仮想通貨やビットコインについてCMやニュースでよく耳にするようになりました。ビットコインの相場が跳ね上がったやら、ビットコインを買うアプリのCMが流れるやら私たちの身近な存在になってます。ですが「仮想通貨って何?」と言われても即答できる人はさほど多くないかもしれません。
仮想通貨は電子データをお金のように使うことでネットの取引をいちじるしく効率化するこのシステムです。例えば国際送金をするにしても今の仮想通貨ならばお金ではないので高額な手数料がかかることなく瞬時に送金できてしまいます。全く新しい金融システムというわけですが、ではこうした全く新しい金融システムの登場という類似の出来事、サンプルケースが過去にないものでしょうか?
実は現代の我々の社会が仮想通貨からインパクトを受けているように、過去の時代にも全く新しい金融システムの登場で強い影響を受けたことがありました。それは唐王朝から宋王朝のころに起きたお札の登場です。
世界史の教科書で読んだ人もいるかもしれませんが、世界で初めてお札が生まれたのは宋王朝の中国です。そのお札は交子(こうし)と呼ばれました。


交子の模写

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昔のお金というと小判や西洋の金貨銀貨を思い浮かべる方が多いでしょう。では質問です。あなたの財布の一万円、ちょうど真ん中で切ったら、その片割れは五千円になるで消化?一万円を二つに切っても、その片割れは五千円にはなりませんよね?
では小判一枚を金属用の裁断機などでちょうど半分にカットしたら?
小判はそもそも金で出来ていて、金自体の価値で流通していました。金貨もそうです。小判一両は一両分の価値がある量の金でできていました。なので、半分にカットしても片割れは一両の半分の金の塊なので、0.5両の価値はあった訳です。実際にはもっと細かい計算があるんでしょうけど大雑把に言えばそんなところです。
一万円に加工されている『紙』自体には一万円の価値はありません。ではなぜ一万円が一万円の価値があるのかといえば、日本政府や日銀が発行しているからです。政府の信用により一万円は一万円の価値があると言うことです。
仮想通貨も実態はただの電子データです。例えばビットコインは相場が、1ビットコイン100万円から200万円の間を行き来していますが(18年1月中旬現在)、ただの電子データにそこまでの価値があるわけがありません。これもビットコインのシステムやビットコインを運用しているコミュニティに対する信頼によりそこまで高額な価値が付いているのです。
宋王朝の交子はこのような本来安価であるものを(この場合は紙)紙幣として使われた世界最古の例の一つです。その発生や推移は私たちが今経験している新しい通貨の登場という出来事がどのように推移していくのか、考えるヒントを与えてくれる物と思います。
 
ーーーーーーーー仮想通貨とはーーーーーーー
最近仮想通貨やビットコインについてCMやニュースでよく耳にするようになりました。ビットコインの相場が跳ね上がったやら、ビットコインを買うアプリの変なCMが流れるやら私たちの身近な存在になってます。ですが「じゃあ仮想通貨ってなんなんだ?」「何なんだよ、一体何なんだよ?分かるんだろ言ってみろよ?!」と言われても即答できる人はさほど多くないかもしれません。
仮想通貨は電子データをお金のように使うことでネットの取引をいちじるしく効率化するこのシステムです。

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例えば国際送金をするにしても今の仮想通貨ならばお金ではないので高額な手数料がかかることなく瞬時に送金できてしまいます。全く新しい金融システムというわけですが、ではこうした全く新しい金融システムの登場という類似の出来事、サンプルケースが過去にないものでしょうか?それを元に今話題となっている仮想通貨のこれからを推測することは出来ないものでしょうか。
実は現代の我々の社会が仮想通貨からインパクトを受けているように、過去の時代にも全く新しい金融システムの登場で強い影響を受けたことがありました。それは唐王朝から宋王朝のころに起きたお札の登場です。
世界史の教科書で読んだ人もいるかもしれませんが、世界で初めてお札が生まれたのは宋王朝の中国です。そのお札は交子(こうし    ヂャオズ)と呼ばれました。
昔のお金というと小判や西洋の金貨銀貨を思い浮かべる方が多いでしょう。では質問です。あなたの財布の一万円、ちょうど真ん中で切ったら、その片割れは五千円!?ダメリーマン。一万円を二つに切っても、その片割れは五千円にはなりませんよね?
では小判一枚を裁断機などでちょうど半分にカットしたら?
小判はそもそも金で出来ていて、金自体の価値で流通していました。金貨もそうです。小判一両は一両分の価値がある量の金でできていました。なので、半分にカットしても片割れは一両の半分の金の塊なので、0.5両の価値はあった訳です。実際にはもっと細かい計算があるんでしょうけど大雑把に言えばそんなところです。
一万円に加工されている『紙』自体には一万円の価値はありません。ではなぜ一万円が一万円の価値があるのかといえば、日本政府や日銀が発行してるからです。政府の信用により一万円は一万円の価値があると言うことです。
仮想通貨も実態はただの電子データです。例えばビットコインは相場が、1ビットコイン100万円から200万円の間を行き来していますが、ただの電子データにそこまでの価値があるわけがありません。これもビットコインのシステムやビットコインを運用しているコミュニティに対する信頼によりそこまで高額な価値が付いているのです。
宋王朝の交子はこのような本来安価であるものを(この場合は紙)紙幣として使われた世界最古の例の一つです。その発生や推移は私たちが今経験している新しい通貨の登場という出来事がどのように推移していくのか、考えるヒントを与えてくれる物と思います。
 
ーーーーーーーー仮想通貨とはーーーーーーー
 
そもそも仮想通貨とは何でしょうか?ヨーロッパ中央銀行によると「デジタルな価値の表現で、中央銀行や公権力に発行されたものでないものの、一般の人にも電子的な取引に使えるものとして、受け入れられたもの」とあります。難しい言い方ですが、価値ある電子データでみんながお金みたいなもんだと思ってるもの、ぐらいの解釈でしょうか。
どうやら仮想通貨のご先祖様はネトゲやソシャゲのゲーム内マネーだったようです。 
 
仮想通貨の概念自体はアメリカで1995年には上院で言及されており[4]1999年には一部の仮想通貨は存在していた[5]。しかしその発達は電子マネーソーシャルゲームとともにあり、仮想通貨という表現も2009年ごろにできたものである[6]。」
 
私も2005年にネトゲを始めた時、ゲーム内で通貨のように使われているものがあることが気になりました。中には人気アイテムを取引し、現金収入を得る人もいると言う話を聞いたことがありますが、このようにネトゲのマネーはネットの発展とともに極めて通貨に近い存在となり、遂に経済の世界に登場したと言うことでしょうか。
仮想通貨といえばビットコインですが、それ以外にも雨後の筍のように様々な仮想通貨が現れ、現在では600種類もあるとのことです(ウィキペディア)。
このように多数の仮想通貨が現れているのは、やはりその将来性が有望なためです。事実各国政府や金融機関なども仮想通貨に強い関心を示し、或いは政府内でも研究対象とされている様です。最近ですと中南米の政府が遂に独自の仮想通貨をし、また日本の大手金融企業が今年のうちに独自の仮想通貨を発行するとのことです。まさに百花繚乱という状態にあると言えます。
この新しい通貨ですが、優れている点として以下があるでしょう。
電子データなのですぐに送金、受取ができる
政府発行ではないため国境に関係なくネット空間で使える
現実のお金より海外送金が圧倒的に安い(政府の管理下にない為)
既存の政府管理下にないお金であるだけに、政府の統制が効かない、その分自由なお金である様です。
 
 
ーーーーーーーーー交子とはーーーーーーーーー
突然歴史の話に変わります。上でも書いた通り交子とは昔の中国で作られた世界最古のお札です。一万円になっている「紙」には一万円分の価値はありません。しかし一万円として流通しているのは政府発行という信用のためです。
交子という最古のお札の場合は当初、銀との引換券として発行されました。いつかは銀と交換できるという前提のもと、引換券の交子自体に価値が生じて高額取引に使われた様です。
実は北宋政府が交子を発行した1023年(天聖元年)より前に元々類似のサービスが民間にありました。大型取引の時に重たい銅銭や鉄銭を牛馬や人夫に運ばせるのは非効率だし、盗賊に遭うリスクもありました。中国ではないですが、19世紀に朝鮮王朝をイザベラ・バードが旅行した時、銅銭を詰めた箱を運ぶためだけに家畜を一頭連れていく描写がありました。お金を持ち運ぶためだけに馬や人足を連れて行くとは実に非効率です。

大量の銅銭を持ち運ぶのは大変な労力!

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ですので唐王朝末期の頃より貴重品を金融業者に預け、その引換券をお札の様にして使われていたのです。
唐王朝、唐が滅んだ後の内戦時代(五代十国時代)は目まぐるしい経済成長期でした。便利な引換券のお札は広く全土に普及しました。交子とは元々この引換券を指す言葉でした。北宋政府の交子は民間業者の発行を禁じ、政府で独占したものだったのです。
北宋政府は交子での利益を資金集めに使います。当時、軍事費が増大していたのです。政府にとって旨味のあるシステムだったのか、交子は乱発されインフレ気味となります。発行から80年余り経った1107年(大観元年)、遂に流通がストップするのです。
しかし北宋が滅びた後の南宋、北隣の金王朝宋王朝の後の元王朝明王朝などの他の時代まで交子に始まる中華紙幣のシステムは続いていきます。また日本でも諸藩が藩札を発行していましたので、恐らく朝鮮やベトナムなど周辺諸国でも類似のシステムは広く普及していたものと思います。
 
交子の登場から破綻するまでの流れを大雑把に言ってしまえば以下の通りです。
 
                        交子の発展段階
経済発展により便利な高額送金システムへのニーズが生まれる
引換券をお金の代わりにする
各地に普及する
政府に認可を受けた業者が独占(上では省いた)
政府の独占
乱発
インフレ
取引停止
 
北宋以降の諸王朝も乱発、インフレ、破綻となることが多かった様です(ウィキペディアより)。むしろこの点はこのシステムの弱点と言えるかもしれません。
 
ーーーーーー仮想通貨と交子の比較ーーーーーー
 
以下で言う交子は、北宋政府の紙幣ではなく唐末から北宋政府が発行権を独占する前までの民間発行のものについて話します。
当初交子は経済発展に伴う取引効率化へのニーズから、民間により生み出されました。仮想通貨もネット空間での取引効率化、政府の介入からの自由などのニーズが恐らくあったでしょう。
仮想通貨は現在拡大期です。上の『交子の発展段階』で言うところの、正にに当たる段階と言えるでしょうか。そして確かに、仮想通貨は様々な場所に普及しようとしており、様々な組織が新しい仮想通貨を発行しており(600種類以上も!)、遂には大手金融機関や政府すらも発行に踏み切るまたはすでに踏み切っているのです。
グーグルで仮想通貨をニュース検索するとその拡大に関する様々な情報が山の様にヒットします。と同時に最近は規制に関する情報も多数出てきています。
ジャック・アタリは今後国家の機能が民間へと移ることを示唆しています。またグローバリゼーションにより国家が解体するのではないかとも言われています。ネットとグローバリゼーションは地球を一つにし、地球市民の一人一人をネット端末で結びつけましたが同時に、まさに市民一人一人の行動を国家の統制外へと解放しました。そして仮想通貨は正に国家による通貨の管理から市民を解放したものであり、国家はこの危険な存在を放置することは出来ません。各国政府にとって仮想通貨の規制は当然のことです。
特に顕著なのは投機対象として乱高下していることや、悪徳業者によるトラブルなどが挙げられます。特に今最も問題なのは仮想通貨が只の投機対象としてブームになっていて、安定した金融商品ではなくなってしまっていることです。昨年はいったん1ビットコイン200万円を超えた相場が100万円を切ってしまいました(18年1月下旬現在)。仮に日本円の価値が乱高下して昨日1ドル112円だったのが今日は2300円だとか、コンビニのおにぎり一個100円だったのが翌月は1500円とか、そういった値動きをされては誰も日本円を持ちたいとは思いません。極度な規制は良くなさそうですが、かと言って政府が放置しておいても良さそうには見えません。
先行きとしては、現実的にそうである様にこの先ネットとグローバリゼーションの普及に伴いますます仮想通貨は普及して行くように思えます。それはネット空間において既存の貨幣よりも圧倒的に決済に便利だし、現実的に世の中に普及しており、ネットショッピングなどでの利用も拡大し、発行に様々な組織が関わり始めているからです。
また、その影響力が増すに従い各国政府による規制も関与も深まるでしょう。例えば最近、中国、韓国、オーストラリア、イスラエルの政府が仮想通貨の取引に規制を加える旨を述べたことからも伺えます。これが課税や規制、あるいは当該国内での利用禁止もありえるでしょうし、或いは北宋政府のような政府独占や政府発行の仮想通貨を強制なんてこともありえるかもしれません。最も一国だけで仮想通貨を禁止してもあまり効果はなさそうです。例えばG20とかOECD加盟国が共同で禁止とか規制をやったりしたら結構でかいかもしれません。何にせよ、国による仮想通貨への関与はこれから益々増大するでしょう。
北宋政府にとって交子は打ち出の小槌だったのか、資金集めのために乱発されました。仮想通貨も発行組織にとっては資金集めの手段となりえるし、事実新しい仮想通貨の発行元が多額の資金を得たニュースが出ていました。乱発、インフレ、そして破綻は仮想通貨も共通のようです。
上にも書きましたが、現在の仮想通貨は極端な投機ブームで値動きが不安定です。ネットでヒットする記事の多くは仮想通貨の投機に対する情報ばかりであり、実際に通貨として、取引の手段として仮想通貨を扱った記事はそれほど出てきません。期待感や投機熱ばかりが煽られて、ただのバブルになっているように見えます。もしかしたら今市場で騒がれている多くの仮想通貨は一過性のものでバブルが弾けて一掃されてしまうことすらあり得るかもしれません。しかし、だからといって電子データを通貨に使う流れは止まるとは思えません。仮に今市場に出回っている仮想通貨の多くが破綻したとしても、そのあとも仮想通貨が普及し、広まることは止められないのではないでしょうか。むしろこれは短い期間で一喜一憂ではなく長い長い目で見るべきものなのでしょう。
それこそ交子が生まれた唐末(唐の滅亡は907年)から1107年の流通停止まで実に200年あまり、またその間にも民間で交子を運営していた時代にも発行業者が信用を失い破綻したような例があります。恐らくこれから様々な組織が仮想通貨を発行し、拡大やインフレ、破綻などを繰り返し、より巨大な組織やシステムに発展していくのではないでしょうか。そしてその潮流は我々も今後無関係でいることはできないものとなっていくでしょう。